オリジナル怪談

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HiNa

『鈴の音』

その旅館には、昔から妙な噂があった。

夜中の2時になると、廊下のどこからか――

チリン……チリン……

と、鈴の音が聞こえる。

ただ、不思議なのはその鈴の音。

音が聞こえるたびに、少しずつ近づいてくるのだという。

ある夜、出張でその旅館に泊まった男がいた。

午前2時。

突然、

チリン……

と、鈴の音がした。

「……風鈴でもあるのかな」

気にせず布団に入ろうとした、その時。

チリン……チリン……

今度は、廊下から聞こえた。

男がそっと襖に近づき、耳を澄ます。

……聞こえない。

「気のせいか」

そう思って布団に戻った瞬間、

チリン……

今度は、襖のすぐ向こう。

男は息を止めた。

しばらくすると、また――

チリン……チリン……

襖の向こうを、誰かがゆっくり歩いている。

男は怖くなり、布団の中に潜り込んだ。

すると、

チリン……

……音が止まった。

安心して目を開けた、その瞬間。

耳元で、

チリン……

男は飛び起きた。

部屋には誰もいない。

ただ、枕元に小さな鈴が置かれていた。

そして、その鈴には紙が一枚結ばれていた。

震える手で紙を開く。

そこには、こう書かれていた。

「今夜は、あなたの部屋から聞こえています」

男は慌てて部屋を飛び出した。

廊下には誰もいない。

……でも。

背後から、

チリン……チリン……

と鈴の音が聞こえる。

振り返ってはいけない。

そう思った男は、必死に走った。

旅館の玄関まであと少し。

その時――

フロントの女将が、青ざめた顔で男を見た。

「……お客様」

「な、なんですか……?」

女将は男の後ろを見ながら、震える声で言った。

「その鈴……」

「え?」

男が自分の手を見る。

いつの間にか、そこには――

さっきの鈴が握られていた。

女将は小さな声で続けた。

「……それ、去年亡くなったお客様のものなんです」

「……え?」

「その方も、夜中に鈴の音を聞いたと言っていました」

女将が男の後ろを見つめる。

「でも……」

「その方が最後に言っていたんです」

女将は震えながら、

こう続けた。

「鈴の音が聞こえているうちは、まだ一人じゃない」

その瞬間。

男の耳元で――

チリン……

女将の顔から血の気が引いた。

「……今、鳴りましたよね?」

男はゆっくり振り返った。

そこには誰もいない。

ただ、暗い廊下の奥から――

チリン……チリン……チリン……

鈴の音が、こちらへ近づいてきていた。

うしろのしょうめんだ〜れ?

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