【鳥の歌】

オフライン

Arum

【鳥の歌】

今朝は雲ひとつない晴天の空だ。
外に出ると、いかにも朝の空気といった肺を浄められるような清々しい空気で、思わず深く呼吸を愉しむ。

そしてしばらく外にいると、朝とはいえど日差しにやや汗ばんでくる。
季節はもう夏なのだ。
個人的にではあるが、季節や国の変化は大抵の場合空や空気で感じる。

例えば、季節だと先述のように空の高さや、日差しの強弱や空気の重さ軽さ。「天高く馬肥ゆる秋」なんて諺もあるくらいだから、きっと多くのひとがそう感じるのであろう。

国の変化の場合、上記の事象がより強く顕著に感じられる。
チェコを訪れた際には、空の少し愁を帯びた様な色や乾いた空気にヨーロッパに来たことを感じたし、インドネシア(乾季)を訪れた際にはオーブンの中にいる様な日差しと、ヨーロッパとはまた違ったややくだけた感じの乾いた空気に日本ではないアジアの空気を感じた。
空港内では頭では分かっていても体感できず、外の空気を吸って初めて「ああ、異国に来たのだ」と感じる。



またまたどうでもよい話で前置きが長くなってしまった。話を元の「今日の空」に戻そう。
外に出てみると、鳥達の鳴き声がよく聴こえてくる。

これは以前から感じていたことではあるが(既出のブログ【めぐる季節】を参照)、今時分人間達が外出を控えているせいか自然が活き活きとしているように感じる。

彼等の声を聴いているうちに、ーーあぁ、そういえば「鳥の歌」なんていう重唱の曲があったな。という具合に思考が跳んでいった。

クレマン・ジャヌカンというルネサンス期(15〜16c)のフランスの聖職者・音楽家が、鳥の歌を模倣した歌曲を遺している。彼はシャンソン作曲の専門であり、このジャンルを創出した作曲家のひとりとしてみなされている。
(※ここでのシャンソンは本国におけるジャンル名ではなく、当時のヨーロッパでの世俗的声楽曲の総称のことである。)

特徴はなんといっても、「擬態語」いわゆるオノマトペonomatopéeにある。

この鳥の歌は、まさに彼の代表曲だ。聴くだけでも面白いので是非下記リンクをご参照願いたい。
Clément Janequin(1485-1558)「Le Chant Des Oyseaulx」(参照:https://youtu.be/Dig-HllV1P4)

この曲を聴きながらふと思った。歌詞の意味は何だろう、と。

音楽を学ぶ過程でジャヌカンについてもこの曲についても知ることとなったのだが、今の私はこの曲が彼の代表曲のひとつだ、ということ"しか"知らないのである。
はて、それは音楽家としては如何なものだろうか。その時代を特に熱心に好む音楽愛好家の方々の方が、よっぽど博識であられるだろう。
(もっとも、取り上げられた授業は「西洋音楽史概論」なのだからそこまで詳細には説明しないのではあるが。)

ただただ鳥の鳴き声を真似して楽しい、というだけではないはずだ。いや、9割はそうかもしれないけれど。

そう思って調べてみると、ありがたいことに日本語訳が付いた歌詞が出てきた。(参照サイト:http://medmus.sakura.ne.jp/TEXT17/text_17_02.html)

内容は大まかにいえば男女の愛だろう。やはり世俗曲である。鳥はサヨナキドリ(別名ナイチンゲール)とカッコウが出てくるが、これは男女を表しているのだろうか。
カッコウが悪として描かれているが、これは宗教的な背景もあるのだろうか…もしこれらについてご存知の方がいらしたら、是非ともご教示願いたい。

世間では煮詰まっていたり落ち着かない方が少なくないと思う。そんな今だからかもしれないが、この歌詞が新しいかたちで響いてくる。
-----------------------------------------------------------------------------
A qui la voix resonne 声を合わせて歌ってごらん
Pour vous mettre hors d'ettnui 悲しい気分を忘れるために
Vostre gorge jargonne ほらほらのどか歌い出す
Tar friant tu quilara タル・フリアン・トゥ・クイララ
Huit syti coqui levachi フイト・スティ・コクイ・ルヴァシ
Titi cum quibi tu ティティ・クム・クイビ・トゥ
Fouquet frian fiti フケット・フリアン・フィティ
Fuyez regretz pleurs et soucys 嘆きも涙も悩みも忘れて
Chascun s'y abandoone みんな大いにやってごらん
Car las saison est bonne だって季節は上々だもの
-----------------------------------------------------------------------------
鳥達のように、たまには色々なしがらみを忘れて歌うのも悪くない。だって季節は上々だもの。

みんなのコメント

  • コメントを投稿された時点で、利用規約に同意したものとみなします。
  • 投稿後は編集・削除できません。
  • 記事が削除された場合、投稿したコメントも削除されます。ご了承ください。
  • 不適切なコメントは削除されます。

Arumちゃんの他の投稿